1985年に就職して糖質関連酵素の開発を行った話

 会社に就職してから私が最初に担当した研究テーマは、「耐熱耐酸性枝切り酵素の開発」であった。ブドウ糖を製造する際、基質である澱粉に対してグルコアミラーゼ(以下糖化酵素)にプルラナーゼ(以下枝切り酵素)を添加すると、収量が1~2 %増加する。

 当時、他社が糖化時(pH 4.5、60 ℃)に使用可能な耐熱耐酸性の枝切り酵素と糖化酵素の混液を販売しており、その影響で自社主力糖化酵素の販売量が激減する危機感に苛まれていた。そのため、私は寝る間を惜しんで枝切り酵素生産菌のスクリーニングを行った。やっと見出し製品化した酵素1)であっても実用的な耐熱性が不足していたこともあり、再度のスクリーニングを余儀なくされた。その後、性質的に満足する酵素生産菌を見出すことに成功した。

 酵素製品化のためには、変異による生産性の向上、スケールアップなど乗り越える壁がいくつもある。途中、酵素の構造遺伝子に変異が入り耐熱性が低下し、泣く泣くお蔵入りにしたこともある。産業界で使用されている酵素の開発・製品化の裏では、多大な労力と時間が費やされている。新しい糖化製品を見かけた時には、酵素を見出し実用化するまでの先人の多大な努力や苦労が偲ばれる。

参考文献
 1)森 茂治ら, 澱粉科学, 1991, 38(1), pp9-16

保齢宝生物株式会社、前日本応用糖質科学会副会長
森 茂治

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