日本で初めて「酵素」という言葉が使われたのはいつ?

 酵素は様々な物質の合成や分解に欠かせない生物由来の分子です。酵素はenzymeの訳語として一般的に使われていますが、「酵素」という言葉が最初に使われたのはいつでしょうか。
 1876年にキューネがenzymeという用語を提案しましたが、日本語訳はしばらくありませんでした。1898年発行の東京化學會誌には「醤油麹ノえんちーむ並ニ醪ノ熟成ニ就キテ」というタイトルの論文があり、enzymeのドイツ語読みである「えんちーむ」が使われています。發酵素、醗酵素という言葉は当時の文献からは見つかりますが、「酵素」という言葉自体が初めて登場するのは1899年の同雑誌で「酵素水加作用ノ可逆ナルコト」というタイトルの麦芽糖の分解に関する海外学術論文の紹介記事が最初のようです。本文中の「酵素」の左にはエンチムとふりがなが付けられていますが、それ以降は特にことわりなく「酵素」が一般的に使われています。

参考文献
 中村 隆雄 酵素のはなし-生命を支えるその精巧なはたらき」追補版
 松原行一, 東京化學會誌, 1899, 20(1), p90
 高椋梯吉, 東京化學會誌, 1898, 19(8), pp787-803

東京理科大学 理工学部 応用生物科学科
中島 将博

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