糖質面白話

こんにゃくのテクスチャーを測るのは創意工夫が必要 − 半固形状食品の物性評価

 こんにゃく(コンニャクグルコマンナン)、寒天(アガロース・アガロペクチン)、うどん(アミロース・アミロペクチン)、餅(アミロペクチン)などの主に糖質からなる食品は、日本の伝統的な半固形状食品であり、食感(テクスチャー)を楽しむ食品である。テクスチャーとは、食品を手や指で触ったときの感覚や口中での皮膚感覚、咀嚼による感覚などの物理的な特性を指す。
 テクスチャーに多様性を求める日本人は、こんにゃくの形状を板こんにゃく、糸こんにゃく、玉こんにゃく、つきこんにゃくなどに変化させ、テクスチャーの違いを楽しむ。近年はめん類の代替品としてのこんにゃく麺も登場し、のどごしを楽しむものまである。

 半固形状の食品はさまざまなテクスチャー特性をもつが、そのテクスチャーを正確に測定することは難しい。そのために、テクスチャーを機器で測定する場合には、条件の設定がとても重要になる。試料への力のかけ方だけでも、圧縮、せん断、切断、貫入、引張がある1)
 もっとも一般的な測定は圧縮試験である。圧縮時に使用するプランジャーの形も、円柱(円盤)、くさび(円錐)、歯型、棒状、ボールなど多様である1)
 こんにゃくのように弾力があって圧縮しても破壊できないようなものは、引張によるテクスチャー測定を行うことも多い。引張試験では、試料をダンベル型に成型する方法が一般的2)であるが、試料の成型方法だけでなく試料を固定する力のかけ具合など、良いデータを得るためにはさまざまなことを考えなければならない。測定によって得られる応力-歪曲線は変形速度、測定温度によっても変化する3)。そのために測定環境を一定にし、数十回繰り返し測定を行って評価する必要がある。

 どんな研究においても同様だが、テクスチャーの違いを測定結果から示すにも創意工夫が必要となる。また、測定を繰り返し、慣れることも必要である。テクスチャーのデータを見る際には、そこに隠れたものも読み取っていただければ幸いである。

 
        図 こんにゃくの圧縮試験
          プランジャー:円盤型、直径40 mm
          圧縮スピード:0.5 mm/s

参考文献
 1) 森 友彦, 川端 晶子 編, 食品のテクスチャー評価の標準化, 光琳, 1997, pp43-62
 2) 三浦 靖, 食品レオロジーの面白さ 第5回 食品の破断, 日本レオロジー学会誌, 43(5) pp181–183
 3) 鮫島 邦彦, 高橋 史生 編, ニューフードサイエンス, 三共出版, 2005, pp58-78

三重大学 教育学部
平島 円

その他