「ナタデココはセルロースでできています。つまり、紙と同じなんですよ。」オープンキャンパスなどでこの説明をすると、驚きの声がよく聞かれます。セルロースは植物だけではなく、微生物によっても作られます。こうした微生物が作るセルロースのことを“バクテリアセルロース”と呼びます。近年のゲノム解析の結果から、多くの微生物にセルロース生産に関する遺伝子があることが分かってきていますが、実際にセルロースを目に見える量で生産できるものは酢酸菌などの一部に限られています。
さて植物と微生物がつくるセルロースに違いはあるのでしょうか?分子としての構造は同じですが、分子同士が会合して形成される階層構造が大きく異なります。バクテリアセルロースの特徴は、数十〜数百nmの繊維径を有するナノセルロースであることと、それらの繊維が網目状になっている点です。現在は、医療用材料などへの利用研究が中心ですが、まだまだ面白い利用方法が生まれそうな微生物素材といっても良いでしょう。
図 それぞれのセルロース繊維を蛍光色素で染色し蛍光顕微鏡で観察したもの
(撮影:信州大学工学部 田川聡美)
信州大学 工学部
水野 正浩