植物細胞壁は、主にセルロース、ヘミセルロース、ペクチンといった多糖から構成されています。このうち、ペクチンは一般的にはジャムの成分としてよく知られていますが、細胞壁においてもセルロース微繊維間を満たすマトリクス多糖として、間隙を充填する役割を担っています。
そもそも、ペクチン(pectin)という名称は、「濃厚な、固まる」を意味するギリシア語の“pektos”にちなんでいて、キチンやグリシンを初めて単離したことでも知られるフランス人化学者のBraconnotによって1825年に名付けられたものです。また、ペクチンという「物質」が最初に発見されたのはさらに1790年にまで遡り、フランス人化学者のVauquelinが報告したタマリンドから発見したゼリー状物質が、最初に発見されたペクチンとして知られています。
参考文献
H. Braconnot, Ann. Chim. Phys., 1825, 28, pp173-178
M. Vauquelin, Ann. Chim., 1790, 5, pp92
西谷和彦・梅澤俊明編著, 植物細胞壁, 講談社, 2013.
岐阜大学応用生物科学部・生命の鎖統合研究センター
矢部 富雄