アントシアニンはポリフェノールの一種であるアントシアニジン類が,グルコースやラムノースなどの糖,およびアシル基によって修飾された植物色素であり,修飾の違いによって赤〜紫〜青の多彩な色調を示します。ガーデニングに定番の草花であるロベリアでは,薄紫色の品種(アクアラベンダー)はグルコシル基を1つだけ含む単純なアントシアニン(デルフィニジン 3-グルコシド)しか合成できないのに対し,濃青色の品種(アクアブルー)は複数個のグルコシル基やラムノシル基を含む複雑なアントシアニン(ロベリニン)を合成することが知られています。糖による修飾にはそれぞれに専用の糖転移酵素が必要となりますが,アクアラベンダーはラムノシル転移酵素の機能だけを失っていることが明らかにされています。ラムノシル転移酵素が無くても他の修飾は起こるように思われますが,グルコシル転移酵素2や3は基質特異性が高いためにデルフィニジン 3-グルコシドには作用できず,2つ目や3つ目のグルコシル基を修飾することができません。ロベリアではラムノシル転移酵素の有無が花色を決める分岐点になっているのです。
参考文献
Y-H. Hsu, et al., Plant J., 2017, 89, pp325-337
津田孝範・須田郁夫・津志田藤二郎編著, アントシアニンの科学-生理機能・製品開発への新展開-, 建帛社, 2009
写真提供
志村華子 博士(北海道大学)
北海道大学大学院農学研究院
田上 貴祥