企業版糖質面白話

食べても栄養にならない糖?エリスリトール

糖質は生き物にとって重要かつ即効性のあるエネルギー源である。しかし、エリスリトール(図1)という糖質はヒトが摂取してもエネルギー源にならない、つまりほとんどカロリーとならないのである*。エリスリトールは四炭糖アルコールに分類され(図2)、砂糖の75%程度の甘味を有する。

図1 エリスリトールの構造
図2 糖質の分類

通常、糖質は消化酵素によって単糖レベルまで分解され、小腸で吸収され、血流にのって全身に運ばれて、細胞のエネルギー源として利用される。一方でエリスリトールは小腸で吸収されたのちに、大部分が速やかに尿中に排出される。この特長を利用して、低カロリー食品の甘味料として使用されたり、血糖値やインスリン分泌に影響を与えない砂糖代替品として使用されたりしている。

エリスリトールをエネルギー源として利用できないのはヒトだけでなく、一部の微生物でもある。そのため、食品にエリスリトールを利用すると、日持ち向上、発酵食品の過発酵抑制、低齲蝕性といった機能を付与することが可能である。また、食品以外への応用として、皮膚常在菌(腋臭原因菌、ニキビ原因菌)の抑制といった効果も確認されている。

「栄養がない=役に立たない」と考えがちだが、エリスリトールの特長は幅広い分野で応用されており、今後も広がりを見せていくと期待される。

*:エリスリトールは、厚生労働省の平成 8 年 5 月施行の「食品の栄養表示基準制度」による難消化性糖類のエネルギー換算係数において唯一 0 kcal/g に設定。

参考文献

  • Fujii T, Tochio T, Endo A. Ribotype-dependent growth inhibition and promotion by erythritol in Cutibacterium acnesJ Cosmet Dermatol. 2022;21(10):5049-5057. doi:10.1111/jocd.14958

 

物産フードサイエンス株式会社 事業戦略本部 研究開発センター 高橋真裕子