学会長あいさつ
澱粉を始めとする各種糖質科学および関連する酵素科学の進歩を図り、科学・技術および関連産業のさらなる発展を目指して
会長 天野 良彦
信州大学工学部 教授
会長(2023年9月~2025年9月)を仰せつかっております天野でございます。今後2年間の学会の発展に努力いたしますので、皆様のご協力ご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
日本応用糖質科学会は,澱粉を始めとする各種糖質科学および関連する酵素科学の進歩を図り、科学、技術および関連産業の発展に寄与することを目的に、1952年に澱粉工業会として設立されました。その後、1972年に日本澱粉学会、1993年には日本応用糖質科学会と改称し、2015年7月には一般社団法人日本応用糖質科学会として新たにスタートし現在に至っており、今年で71周年を迎えることになります。発足当時から、企業、大学、公的研究機関等の幅広い研究者、技術者との密接な協力のもとに、基礎だけでなく実用面から学術的な研究活動を続けています。本会の設立当初から今日に至るまで学会の発展のために献身的に学会運営を支えて下さいました歴代会長や役員そして会員の皆様に改めて感謝申し上げます。
昨年当学会の70周年を記念して、記念大会が東京の船堀ホールで開催されました。コロナウィルスのパンデミックが完全には収まっていない中、実行委員の工夫により盛大に開催出来ましたことは、大変喜ばしいことです。学術団体にとってそのネットワークの構築は、絶対に欠かせないものです。すでに構築されたものはオンラインでの活動でも実施可能ではありますが、新しいネットワークはやはり対面で議論することが必須であると考えます。特に持続可能な学会運営において、これまでの財産を引き継ぎ次の世代に受け渡していくためには、将来学会を担って頂く活性の高い若手の台頭が重要です。今後もネットワークを大事に、学会員間のコミュニケーションを大事にしていきたいと思います。
本学会のテーマは「糖質」です。糖は再生可能な資源であり、生物の活動により毎年一定量が生産される持続可能な資源です。もっとも、昨今の気候変動により、これまで通りの生産が行えるかは、人間の行動いかんにかかっているのかもしれません。いずれにしてもこの持続可能資源を活用している限りは、地球環境に大きな悪影響を及ぼすことはないと考えられます。また、糖は最も安定な構造を取っており、容易に保存可能な化学物質であると考えられます。加えて、生物のエネルギー源としても大変需要な物質であります。このような糖質の基礎から応用までの研究を70年以上にわたって支えてきたのが当学会です。日本においての食料とエネルギー問題は、安全保障上でも最も重要な課題となっています。この課題に対して、糖学会は真摯に研究を行い、新たな技術開発に貢献していくことを目指します。新しい技術は日本のみならず世界の発展のためにも必要な技術となることでしょう。常にアクティブに情報発信を続けて参ります。HPでは、一般の方にも理解できるように、糖質面白話を掲載しています。ぜひお楽しみいただき、糖質の不思議や重要性を理解頂けましたら幸いに存じます。
本学会の2つの学会誌は糖質科学分野の発展、社会への貢献のために重要な役割を担っております。このうち、和文誌の「応用糖質科学」は糖質の科学と応用に関する様々な最新の情報を会員の皆様や社会に発信するための役割を担い、また、英文誌の「Journal of Applied Glycoscience」はこれらの情報を広く世界に発信する役割を担っております。英文誌については、国際誌の仲間入りを果たし、Journal Impact Factor(JIF)が付与されました。初めて付与されたJIFについては現在「1.1」でありますが、今後継続的に論文が引用されるようになると、さらなる向上が見込まれます。今後は、会員の皆様並びに会員外の皆様からも、益々の積極的な論文投稿をよろしくお願い致します。
最後になりましたが、糖質研究の発展のため、また応用技術開発の進展のため、執行部一同頑張って学会運営を行って参りますので、皆様のご協力のほど重ねてお願い申し上げます。
過去学会長あいさつ