哺乳類はどのように出現し進化したか、おっぱいに含まれる成分から考えましょう。おっぱいに固有のタンパク質α-ラクトアルブミンは、鳥類の卵白などに含まれ細菌の細胞壁を切断する酵素リゾチームから進化しました。乳腺細胞の中でα-ラクトアルブミンとβ-ガラクトシルトランスフェラーゼ1という酵素が会合したことで、酵素の活性部位によろめきが生じ、受容体がN-アセチルグルコサミンからブドウ糖に変化して乳糖ができるようになりました。
できた乳糖に多くの糖転移酵素が作用して、もっと分子量の大きなミルクオリゴ糖もできあがりました。原始的な哺乳類であるカモノハシとハリモグラや、有袋類のミルクの中で乳糖よりも多いミルクオリゴ糖は、乳仔の小腸細胞にそのまま吸収され、リソソームに運ばれてから加水分解を受けて単糖になります。
一方胎盤をもった哺乳類では、乳仔の小腸上皮にラクターゼという酵素が出現して、濃度の高い乳糖は刷子緣膜で単糖になり、能動輸送で細胞内に吸収されます。有胎盤類のあかちゃんは乳糖を、単孔類や有袋類のあかちゃんはミルクオリゴ糖を栄養源として利用するようになりましたが、その一方ヒトではミルクオリゴ糖は有益な腸内細菌のビフィズス菌に利用され、ヒトとビフィズス菌の共生をもたらすようになりました。
参考文献
1) 浦島匡ほか、おっぱいの進化史、技術評論社 (2017)
2) Urashima et al., Evolution of milk oligosaccharides: Origin and selectivity of the ratio of milk oligosaccharides to lactose among mammals, BBA, 1866, 130012, (2022)
帯広畜産大学畜産学部 浦島 匡