企業版糖質面白話

澱粉から酵素の力でつくる水溶性食物繊維イソマルトデキストリン

イソマルトデキストリン(IMD)は、微生物由来の酵素を澱粉に作用させることによって製造される多分岐のα-グルカンであり、ヒトの消化酵素で分解されにくい水溶性の食物繊維です。IMDの開発は2003年に始まり、その製法が確立されたのが2007年、そして製品として上市されたのが2015年であり、およそ12年の歳月が費やされました。IMDは新しい素材であるため、特に安全性の担保に時間が必要でした。最終的には各種安全性試験を実施の上、アメリカのFDAに申請が行われ、Generally Recognized As Safe(GRAS:一般に安全とみなされている)として認められました。

IMDの水溶性食物繊維としての特性には、便通改善作用、食後の血糖上昇抑制作用、食後の中性脂肪上昇抑制作用などが報告されています。IMDは主に食物繊維の補給を目的として配合されてきましたが、近年は便通改善作用や糖、脂肪の吸収阻害作用を活用して、機能性表示食品としての配合が増加しています。

食物繊維には不溶性と水溶性の2つのタイプがあり、どちらも健康に重要な役割を果たしています。水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなり、腸内フローラのバランスを変化させることが知られています。腸内フローラのバランスには個人差があるため、様々な素材を組み合わせてオーダーメイドの食物繊維ミックスを開発する試みも始まっています。IMDもその一翼を担う素材として、今後の飛躍が期待されます

IMDの推定構造

 

参考文献

・Tsusaki K et al (2012) Biosci. Biotechnol. Biochem., 76, 721-731.

・Tsusaki K et al (2009) Carbohydr. Res., 344, 2151-2156.

・Sadakiyo T et al (2017) Fundamental Toxicological Sciences, 4, 57-75.

・U.S. Food and Drug Administration: GRAS Notices. FDA, Silver Spring, USA.

・Ishida Y et al (2017) Jpn. Pharmacol. Ther., 45, 609-616.

・Sadakiyo T et al (2017) Food Nutr. Res., 61, 1325306.

・Ishida Y et al (2017) Jpn. Pharmacol. Ther., 45, 1179-1185.

・Takagaki R et al (2018) PLOS ONE, 13, e0196802

 

株式会社林原(新社名:ナガセヴィータ株式会社) 研究・技術部門 基盤研究部 渡邊 光