企業版糖質面白話

高圧処理による食品加工の研究と米飯開発

 「熱」と「圧力」はそれぞれ独立して物質の状態を変化させることができます。食品加工に利用する圧力は、せいぜい数百MPa程度であり、広く自然科学で取り扱われる範囲の中では極端に高い圧力ではありません。高圧処理は水の圧縮による物理的変化であり、100 MPaでの水の体積変化は僅か4%にすぎず、加熱に比べて、栄養素の破壊、異臭の発生、エネルギーの消費が少ないという利点があります。

   産業用高圧装置

 無菌包装米飯の製造では、品質向上と微生物制御を目的に100~200 MPaで2分間の高圧処理を行っています。当初は、米と水をプラスチック容器に充填して密封した後、高圧処理を実施していましたが、原料米を直接的に高圧処理する方法を開発し、現在では生産性が飛躍的に向上しています。

   環境に配慮して包装資材を軽減した米飯商品

 浸漬米に高圧処理を施すことで、米粒の胚乳細胞が形を崩し、澱粉粒の間に水が侵入します。そのため、高圧処理を施した米飯は、糊化度が高くなり、冷めても美味しく、電子レンジで加熱することで炊き立ての状態に復元することが可能です。玄米、豆類、有色素米を混合した米飯類では、γ-アミノ酪酸(GABA)をはじめとした機能性成分を増加させることができます。

   玄米、豆類、雑穀を配合した米飯商品

 高圧処理の産業利用は、無菌包装米飯の製造だけでなく、様々な食品の製造にも広がっています。物性の改質、有用成分の増加、微生物制御などを目的とした食品加工法として、今後更に展開されて行くことが期待されます。

 

参考文献
山﨑彬、杵淵美倭子、山本和弘、山田明文 Rev. High Press. Sci. Technol. 5, 168-178 (1996)
山﨑彬、杵淵美倭子 J. Appl. Glycosci., 50, 89-96 (2003)
笹川秋彦、内木由美子、長島誠一、山倉美穂、山﨑彬、山田明文 J. Appl. Glycosci., 53, 27-33 (2006)
荻野美由紀,西海理之 Rev. High Press. Sci. Technol. 25, 334-342 (2015)

越後製菓株式会社 総合研究所 小林 篤