難消化性デキストリンは世界に先駆けて日本で開発され,1989年から販売されている水溶性食物繊維です。とうもろこし澱粉を加熱し、酵素で分解した後に未分解画分を分画して作られます。通常のデキストリンが有するα1-4,1-6結合以外の結合様式(1-2,1-3,β結合を含む)を有し分岐構造が発達しているため(図1)、ヒトの消化酵素によって消化され難く、食物繊維としての物理特性や機能を持ちます。
高い溶解性、低粘度、低甘味、高い安定性など加工食品に使いやすい物理特性を持つことから、飲料をはじめ多種多様な加工食品に食物繊維素材として利用されています。高甘味度甘味料の味質の改善やマスキング効果もあり、低糖質あるいはシュガーフリーなどを表示する加工食品への利用も増えています。
一方、その生理機能に関する研究が盛んに行われており、特定保健用食品(トクホ)の関与成分として最も多く利用されています。トクホで整腸作用、食後血糖上昇抑制作用、食後中性脂肪上昇抑制作用、内臓脂肪低減の4種類のヘルスクレームで許可実績を持つのは難消化性デキストリンのみです。また、これらの豊富なエビデンスを基に、機能性表示食品の分野でも多くの加工食品に利用されています。
近年では、難消化性デキストリンのプレバイオ効果に関連した研究が進んでおり、ビフィズス菌など有用菌の増加、短鎖脂肪酸の増加、病原性代謝産物や腸内腐敗産物の減少など腸内環境を改善することが報告されています。さらに、腸内環境改善の先に得られる効果として、ミネラル吸収促進、GLP-1分泌促進、満腹感持続、免疫賦活などさまざまな機能があることが確認されており、今後さらなる研究や利用が期待されています。
図1 難消化性デキストリンの推定基本構造
参考文献
Ohkuma K, et al., J. Appl. Glycosci., 49, 479-485 (2002)
宮里祥子 ら, 応用糖質科学 5, 204-207 (2015)
松谷化学工業株式会社 研究所第一部 岸本 由香