企業版糖質面白話

湿熱処理澱粉の工業的生産

湿熱処理澱粉は、澱粉を相対湿度100%、90~135℃の条件で、いわば蒸し焼きにすることによって得られる澱粉です。この条件として思い浮かぶのは、オートクレーブではないでしょうか。実際に、蓋を開けたシャーレに澱粉を入れてオートクレーブ処理することによって、湿熱処理澱粉を簡単に得ることができます。しかしながら、シャーレに澱粉を敷き詰める際に厚みを持たせると、表面に近い層では変性が大きく、底面に近いほどあまり変性していない状態となります。不均一な状態では、工業製品として広く販売することはできません。そこで開発されたのが減圧加圧加熱法という生産方法です。密閉容器中に澱粉を入れ、容器内を真空状態にしたところへ、蒸気を投入することで、均一かつ短時間での湿熱処理が可能となりました(下図)。澱粉の性質と物理処理設備に対する知見を持ち、試行錯誤することで実現できた手法と言えます。

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ところで、減圧加圧加熱法によって得られた湿熱処理澱粉粒子の内部には、中心部に直径の約2分の1程度の中空部分が存在します。この中空部分を利用して、湿熱処理澱粉に医薬、農薬、肥料成分などを担持させる試みがなされています。人体に対し安全で、担持容量が大きく、熱的、機械的性質にも優れている担持担体として期待されています。

参考文献

蔵橋嘉樹ら「湿熱処理澱粉の新規製造法の開発とその応用に関する研究」J Appl Glycosci, (2000) 47: 125-132.
島田清之助ら「澱粉を用いる中空多孔性担体の製造および使用方法」特開平8-143602

三和澱粉工業株式会社 研究開発部 砂子 道弘