希少糖とは「自然界における存在量が少ない単糖およびその誘導体」と国際希少糖学会で定義されています。希少糖は自然界に約50種類存在しており、そのうちのいくつかは工業的に大量生産されています。キシリトールやエリスリトールがその例で皆様が目にする機会も多いのではないでしょうか。
希少糖の一種であるアルロース(プシコース)の生産方法は香川大学の何森教授による酵素の発見に端を発しており、異性化酵素であるアルロースエピメラーゼを用いたフルクトースからアルロースへの異性化反応を利用するのが主流です(図1)。今日では様々な微生物からアルロースエピメラーゼが単離され生産に利用されており、また異性化糖の生産と同様に固定化酵素を用いることで、アルロースの大量生産が可能となっています。
アルロースはフルクトースの第3位の炭素のHとOHの向きだけが異なる異性体で(図1)、砂糖の7割程度の甘味度、キレの良い味質を持ちます。また、アルロースは0キロカロリーの甘味料として砂糖の代替品になるというだけでなく、血糖値上昇抑制効果、脂肪燃焼促進効果、体脂肪低減効果などの生理機能を持つことが報告されており、人々の健康維持に役に立つ素材として注目されています。このことから関与成分としてアルロースが含まれる機能性表示食品の商品も増えてきています。近い将来、アルロースが大量に出回ることで身近な糖となり、希少ではなくメジャーな糖になる日が来るかもしれません。
図1 アルロースエピメラーゼの反応
参考文献
Yoshihara A, et al. (2017) Purification and characterization of D-allulose 3-epimerase derived from Arthrobacter globiformis M30, a GRAS microorganism, J. Biosci. Bioeng. 123, 170-176.
Braunstein CR, et al. (2018) A double-blind, randomized controlled, acute feeding equivalence trial of small, catalytic doses of fructose and allulose on postprandial blood glucose metabolism in healthy participants: The fructose and allulose catalytic effects (FACE) trial, Nutrients. 10(6):750.
Kimura T, et al. (2021) Effects of D-allulose on postprandial energy expenditure in healthy humans -A randomized, single-blind, placebo-controlled crossover trial, 薬理と治療. 49(3):391-399.
松谷化学工業株式会社 研究所第一部 酵素・素材グループ 大谷 耕平